矢刺さる先に花開く
夜が明けても、未だ赤子は生まれない。
先が見えないまま続く痛みに、経子は気を失いそうだった。
――助かるのか。
不意にそんなことが頭に浮かぶ。
(そんなことを思うていては…)
だが、その経子自身が限界に達しそうであった。
「経子様!貴女様は母君となられるのですよ?しっかりなさいませっ」
経子に訴えかける和泉の言葉とは裏腹に、呼吸は浅くなり意識が遠退いていく……。
(もう、私は……)
薄くなっていく意識のなか、経子の頭に何かが過る。
(あ…れは)
『ははうえ』と呼びかけてくる、可愛らしい声。
こちらを見て笑い声を上げる赤子。
(重太…、重次……?)
最後に、微笑んで、優しく経子の名を呼ぶ姿。
「と……の」