矢刺さる先に花開く


そう思った時、失いかけていた力が戻ってきたようだった。


「――っ!」


次の瞬間、部屋中に産声が響いた。


「経子様っ!男のお子にございますよ」


まだ息も整っていない経子だが、我が子を抱こうと和泉の腕の中に手を伸ばす。


「…私と、殿の」


気付くと、涙が瞳から流れていた。


すると、足音がこちらに近付いてくるのがわかった。


「経子…」


経子は微笑んで、心配そうな重盛に赤子を渡すと、重盛が涙声で呟いていた。


「ようやった、経子…」


こうして経子を母に生まれた重三郎は、和泉を乳母に育てられ…後の、平清経となる。


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