矢刺さる先に花開く
――紙も墨も良いものを揃え、一門総出で写経に取りかかる。
一門の男たちは完成した三十三巻にも及ぶ経典を奉納するべく、厳島へと向かうという。
(されど、何故御義父上様は急に納経など…)
すると清盛は、経子の心を読んだかのように言い出した。
「一門の繁栄の祈願と…。今まで多くの命が失われてきた。その、全ての命を鎮める為だ」
そんな中にも、重盛の異母妹・盛子が関白・藤原基実に嫁ぐなどと、平家はどんどん地位を上げつつあった。