矢刺さる先に花開く


その夜。重盛は一室で経子と語らっていた。


…と言っても、政の話。
経子には、夫の苦労を想像しながら話を聞くしかできなかった。


「御義父上様は、真っ直ぐに突き進んでいらっしゃるのですな……修羅の道を」


ただ、経子がぽつりと言った言葉に重盛がゆっくりとこちらを向いた、という以外は。


――そんな時、二条帝が病に罹り、まだ幼子の順仁親王に譲位、六条帝が誕生したのだ。


それから間も無く、二条帝改め二条上皇が崩御――。


清盛の娘婿となっていた基実が摂政として政の実権を握り、更に平家は力を増し…清盛は大納言に任ぜられた。


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