矢刺さる先に花開く
「此度は新帝誕生の御祝いに伴い、先帝の崩御、誠に御悔やみ申し上げまする」
清盛と重盛が後白河院に挨拶をしに、院御所に赴いていた。
「先帝は蓮華王院に御行幸あらされなんだ故、千手観音に御守り頂けずに崩御されたのじゃ。…あれだけお勧め致したと言うのに、のう?」
元々浮き世離れした性格の後白河院は静かにそう放ち、我が子が死んだというのに声を上げて笑い出したのだ。
その時。
「恐れながら。上皇様」
清盛がぴしゃりと言い出した。
「先帝は譲位される際、『上皇に政はさせてはならぬ』と仰せになりましてござります。…我が子がお亡くなりになられてもこうして笑われる。さような上皇様が政をされては良き国はできぬとお見抜きだったのでしょう」
後白河院は黙っている。
「では、御前失礼つかまつりました」
重盛は慌てて父に付いていく。
未だ、目の前で起こった事が信じられなかったのだ。