矢刺さる先に花開く
「経…」
「左様なことは決してござりませぬ!殿は御義父上様の御長男にございましょう!?御義父上様も、跡継ぎには殿を御望みだからこその嫡男の地位なのではないのですか!?」
経子は勢いのまま言葉を発した。
「私は…殿のお側に参らせて頂けて、ずっと嬉しゅうござりました。これからも…拙いながらも、殿のお力となれますよう努力させて頂きとうございます」
そして、暫くの沈黙が経子の頬を染めた。
(わ、私ったら、変なことばかり…!)
「も、申し訳ござりませぬ!可笑しきことばかり申してしまいましたっ」
そう言い、経子は身を離そうとしたが、なかなか離れない。
「と、殿!?御離し下さい…」
「離さぬ」
先程より、少しばかり明るくなった重盛の声が返ってきた。
「あの、殿…」
「経子」
改まった声が聞こえ、経子は抵抗をやめた。