矢刺さる先に花開く


そんな中、経子だけが力なく笑う重盛の表情に、違和感を感じた。


――「あれは…父上のご命令でございますか?」


次の日。重盛は上洛してきた清盛に問うた。


重盛は、誰にも何も命じてないのだ。


暫くの沈黙の後、清盛が口を開いた。


「左様」


「………やはり…」


「…重盛。何故、何もせなんだのだ?」


「平家はもう幾人もの公卿を出しておりまする!これからは何事も有職故実に致さねば…」


「重盛」


改めて名を呼ばれ、重盛は言葉を止めた。


「そなたは心が清い。誠、そなたの母に似ておる」


「は…」


だがのう、と清盛は言葉を次ぐ。


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