矢刺さる先に花開く
――その夜、閨に入った重盛はずっと黙っていた。
(……殿…?)
不思議に思った経子は、声をかけようとして…止めた。
俯いた重盛の肩が震え…嗚咽も聞こえてくる。
「殿……!?」
「…〜っ、っく………間違うて…間違うておったと申すか…」
「……え」
「私が…っ、…間違うて」
重盛のその様子から、経子は事の次第を悟った。
「いいえ…いいえ…!」
経子は震える重盛の体を抱き締め、首を横に振った。
「殿は、間違うてなどおりませぬ!間違うてなど…」
知らないうちに、経子の瞳からも涙が溢れていた。