矢刺さる先に花開く
世の中も、平家…というよりかは、元は朝廷に仕える武士に過ぎなかった清盛を恐れている。
既に買い過ぎている世間の恨みをこれ以上増やさないかと、経子は心配だった。
そんな中、清盛がとてつもないことを言い出した。
――「おぉ。見事なものじゃ」
六波羅の館の広間では先程まで、重盛の妹・徳子が琵琶の音色を奏でていた。
時子に琵琶の稽古をつけてもらっていた徳子は、上洛してきた清盛を含む一門に腕前を披露していたのだ。
父に褒められた徳子は広間の中央で嬉しそうに微笑む。
「これならば、帝のお役にも立てよう」
一瞬、その場から音が消えた。