矢刺さる先に花開く
賀茂川
六波羅の館では、大騒ぎだった。
「経子が、疫病に……!?」
この頃都で流行っていた疫病が経子を襲うなどとは、誰も考えていなかった。
皆が動揺しているし、徳子などは取り乱している。
これを聞いた重盛は、真っ先に経子の元へ行こうとしたが、
「疫病にございますよ!殿はお入りになってはなりませぬ」
という和泉の制止により、近付くことはできなかった。