矢刺さる先に花開く
「あ、いや、私は…。ただ、大叔父上のことが」
清盛の叔父、忠正は上皇方につき、今は追われる身となっている。
重盛は忠正によく懐いていたという。
それ故、経子は罪悪感が強くなった。
(私は…どれ程御無礼を働けば気が済むのですか。私が一番聞きとうござります…)
「叔父上のことだ。きっと何処かで生き延びていらっしゃるであろう」
微笑んで言ったのは清盛だった。
「…はい」
弱々しくも、重盛の笑った顔が見られた経子は少し気が軽くなった。