矢刺さる先に花開く
宴となり。
皆、酒に酔い清盛の弟たちの舞を楽しそうに眺めていた。
(義叔父上さまたちの舞は…舞なのかしら)
そう思う経子も、その場を心から楽しんでいた。
「経子殿、此度は成親殿に御出頂けないこと、残念ですな」
清盛だった。
「いえ。帝の近臣たる兄ですもの、致し方ございませんわ。御義父上さま」
今日は、あの信西入道が復活させた“相撲節会”という宮中の行事の為、成親は此度の婚礼の儀は来れなかったのだ。
ふと重盛の横顔を見ると、あの日のように目があってしまったが、経子は逸らさずに微笑んだ。
重盛は弱々しくも微笑み返してくれたが、その笑いにはどこか影があった。
(……重盛さま?)
そんな二人とは裏腹に、賑やかになっていく宴。