矢刺さる先に花開く


重盛は、忠正の件を忘れてはいなかった。


「…重盛、そなたの言い分もわからなくはない。信西殿に従った俺が言えたことではないが」


顔を上げる重盛。


「ただ、この縁はすでに決まったこと。さっさとこの儀を済ませよ!」


そう一喝するなり、清盛は庭先へ引っ張った重盛を、投げたのだ!


「!?」


一同、そして何より、ドサッと音を立てて倒れ込んだ重盛が目を丸くする。


誰かの「今日は相撲節会だしな…」という声が聞こえたが、皆構っている暇はない。


「殿……!?」


時子の声で我に変える清盛。


「すみませぬ、経子殿」


そう言うなり、清盛は経子に酌をした。


焦って杯を持つ経子。


「あのような不束な息子ではございますが、何卒宜しく頼みまする」


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