矢刺さる先に花開く


「…すまなんだ」


幼子を連れて立ち去る重盛。


「経子さま、お気を確かに…」


「…和泉。悪いが、一人にさせてはくれまいか」


「……失礼致します」


和泉が出て行ったと同時に、涙が込み上げてきた。


「――…殿……っ」


何故、何故、何故――。


(経子が貴方様のお子をお産みつかまつることができない故ですか……っ)


未だに経子は子を授かっていなかった。


それ故、耐えられなかった。


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