矢刺さる先に花開く
「しかも、亡くなった殿の先妻は私の友でした。ちゃんと母になれるか不安でしたが…」
気付くと、経子は時子の話に引き込まれていった。
「あの二人が『母上』と呼んでくれた時、もう嬉しくて嬉しくて。それだけでも“母”になろう…いえ、なりたいと思うようになりました」
(“母”に……)
「その後私は殿との子を産みましたが、あの二人のことも誠の子だと思うております……あら、話が長くなってしまいましたね」
「いいえ!」
「では、どうかお考え下さりますよう、よしなに」
時子が去っていった後、ずっと経子は重太のことを考えていた。
(私は……)
己は重盛を心から慕っている。
ならば、その子も可愛がることもできなくはないのではないかと、時子の話を聞いているうちに思えてきたのだ。