矢刺さる先に花開く


(そう言えば、池禅尼さまも御義父上さまとは血は繋がってはおられぬ…)


すると、ふいに足音が聞こえてきた。


(…幼子の、足音……?)


そっと廊下へ出てみると…案の定、そこにいた重太と、目が合ってしまった。


(し……)


どうしていいかわからない経子に、近付いてくる重太。


「……はは、うえ?」


「!!」


(『母上』、と……?…あぁ、殿がお教えしたのでしょうね)


私は母ではない――と言おうとした。


だが、経子は言わなかった。


言えなかった。


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