矢刺さる先に花開く


重盛は自室で侍女と遊んでいる重太を眺めながら溜め息をついた。


(経子に他所の女が産んだ子を育てよなど、やはり酷であったか…かと言って、このままにしておくわけには)


その時だった。


「殿」


「……経子…」


「突然お伺い致しまして、申し訳ござりませぬ。私も……我が子と、遊びとうなりました」


「…!?」


重盛が、妻が微笑んで言った言葉を理解するには時間がかかった。


「ははうえ!」


重太は経子の姿を見るなり嬉しそうな声を上げた。


「今、母がいきますよ。重太」


そう言って重太に近付く経子。


重太はよほど経子に懐いたようだ。


重盛は目の前の光景を信じられない思いで見ていた。


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