矢刺さる先に花開く
「う゛…っ」
突然口を押さえて立ち上がる経子。
「経子?」
重盛の声も構わず自室へ駆けていってしまう。
――暫くしてやっと戻ってきた経子に声をかける重盛。
「如何したのだ?」
「あの…少々…吐き気が、致しまして……」
すると、重盛が恥ずかしそうに俯く妻の背を擦りだした。
「大事ないか?おなごは身を大切にせよ」
「は、はい」
「何かおかしき物でも食ろうたか…」
そんな、珍しい夫の姿に経子は小さく声を上げ笑う。
「突然吐き気を催したり、笑い出したり。一体どんな病なのだ」
「だって殿、可愛うございます……あ!」
(申してしまいました……お怒りになられたでしょうか…)