矢刺さる先に花開く
「そういえば…無いわ」
「――おめでとう、ござりまする……」
感極まったように頭を下げた和泉を見て、経子は胸の中が期待でいっぱいになった。
――「貴方様の、稚ができましてござりまする」
「誠、か…?」
「誠にござりまする」
微笑む経子。
「経子…ようやった」
重盛は心から嬉しそうだ。
早くも瞳が潤んでいる。
「必ずや勝って戻ろうぞ」
「はい。では…」
経子は頭を下げ、太刀を既に武装している夫の方へ掲げる。
「御武運を御祈りしております…!」
重盛は無言で頷き太刀を受け取り、経子を伴って広間へと進んだ。
――「義は我らにあり!いざ出陣じゃ!!」
「オオォォォー!!」
清盛の号令に立ち上がる武者たち。
その勇ましさに経子は圧倒されるばかりだった。