矢刺さる先に花開く
凱旋
「殿。ご無事のお帰り、心より喜び申し上げまする」
此度の戦――後に“平治の乱”と呼ばれる戦は、官軍の勝利であった。
経子も、夫が無事に、しかも勇ましく陣を率いたことに嬉しい気持ちでいっぱいではあるのだが。
「成親殿のこと、気に病んでおるのか」
重盛の言葉に、経子は伏せていた顔をゆっくりと上げる。
経子の兄・成親は信頼と共に、上皇を頼り仁和寺に逃げたのだが。
無論上皇は許さず、平氏方の武者に捕縛されたのだ。
「心配するでない。成親殿のお命ばかりは、父上もお許しくださるそうだ」
「…では……!」
大きく頷く重盛に、経子は再び頭を下げた。
「ありがとうござりまする……!誠に、申し訳ござりませ…」
「それ以上は言うでない」