矢刺さる先に花開く


「かようなことで泣いていては武家のおなごとは申せませぬな。されど、私はご無事のお帰りが嬉しいのでござりまする。……勇ましい殿の妻が、泣き虫で裏切り者の妹など…もったいのうござりますね」


「…我が妻が何を申すか。……気に病むな。大事ない故」


ふわりと笑う重盛。……その時。


「ちち、うえ」


重太が物陰から顔を出す。


「重太。只今戻ったぞ」


(武者に圧倒されたり、かようなことで泣いていては武家の妻などと名乗れませぬ。平氏のため、我が子のため、殿のため。経子は精一杯働かせていただきまする)


嬉しそうな息子と夫を眺めて経子は、此度の戦から学んだことを胸に刻んでいた。


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