-spirit-スピリット-愛しい君へ-

初めての教室で・・・。

窓の外を見れば、空は雲一つない快晴で、

下では桜ふぶきが舞い、

その付近では家族や友達と記念撮影をしている生徒達が見える。

そんな人達を見て羨ましいと思う。

2年前、両親を交通事故で亡くしてから、写真は姉としか撮ったことがない。

その姉は今、ある人と結婚して、私とは別の場所に住んでいる。

姉からは、何度も一緒に住もうと言われたが、私は断った。

私は姉にこれ以上、世話になりたくなかった。

今まで頑張ってくれたぶん、これからは幸せになって欲しかったしな。

「ふぅー・・・・・」

とため息をついた。

私には二度とこない幸せな瞬間や、日常を普通に過ごしている人達が目の前にいるとついついため息をついてしまう。

この癖、なおさないとな。

“ガタッ”

外を眺めていると隣の席の椅子がひかれた。

まだ撮影の時間は20分あるというのに。

もぅ教室に入ってきたということは、親が仕事の都合で来られなかったのか?

そう思ったけれど、それなら友達と撮ればいいじゃないか、と思った。

すこし気になり隣の奴を目だけで確認してみる事にする。

そいつはさっき廊下でぶつかった奴だった。

同じクラスだったのか。

しかも隣の席。

それだけ思って私はまた窓の外を見ることにする。

「こんな所で外を眺めていてもつまらないよ、君は外にいかないの?久欄、愛歌さん?」

とっくに私の噂は聞いたであろうに。

なぜ話しかけてくる。

こういう時、どう答えればいいか分からない。

だから私は適当に

「べつに・・・」

とだけ答えた。

それだけ答えて窓の外を見ていれば、奴は私をずっと見ていた。
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