-spirit-スピリット-愛しい君へ-
私、大翔といると、自分が自分じゃないみたいだ。

勝手に体が熱くなってきたり、顔が赤くなったり、

心臓の鼓動が、大きくなったり。

まるで、“恋”をしているかのように・・・・、

って恋!?ありえんありえん!!

出会ってそんなに時間もたっていないんだぞ!!

一体何を考えているんだ私は!!!

「ん?どうしたの?顔赤いけど?」

こいつ絶対に私の事をからかっているだろう!!

「う、うるさい!!名前ぐらい言える!!」

「じゃぁ、早く言ってみて?」

大翔は憂いを帯びたような目で私をのぞき込んできた。

だからその目をやめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!

調子が狂う!

でも言わなければ、もっと狂う事になる。

よ、よし!言ってやる!

「・・・ひ、ひろ、と」

自分でも信じられない程、か細く、うわずった声がでた。

「・・・っ」

大翔も私の声を聞いて驚いたような顔をした。

こ、これ以上は無理だ。

これ以上見つめられると、本当におかしくなる。

「愛歌ちゃん・・・」

なぜか大翔は私を抱きしめ、耳元で私の名を呼んだ。

その声に私は身震いしてしまった。

「こ、こら!離さないか!」

なんとか必死に声を出して、大翔を引きはがした。

一体なんだっていうんだ、急に抱きしめてきて・・・・。

それにあのうわずった声、なんだか泣きそうになっていたように聞こえたが・・・。

そう思って大翔の方を見れば、大翔はいつもどおりの爽やかな笑顔で、

「ごめんごめん、つい愛歌ちゃんが可愛くて我慢出来なかったんだよ~」

「そんな理由で!?」

「え~だめなの?」

さっきまでは男っぽかったのに、今じゃ駄々をこねる子供みたいだ。

「だめではないが!!君は軽すぎる!!」

今まで思っていた事を言ってみる、すると大翔は

「愛歌ちゃんが少し、真面目すぎるんじゃないの?」

と言ってきた。

少し痛いところをつかれたような気がした。

私のちょっとした、コンプレックス、真面目すぎるところ。

他人とうまく付き合う事のできない原因のひとつ。

「愛歌ちゃん?」

急に黙り込んだ私を不思議に思ったのか大翔が私の名を呼ぶ。

「な、なんでもない」

それに慌てて返事を返した。

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