-spirit-スピリット-愛しい君へ-
私が返事をすると同時に誰かが教室の中に入ってきた。

その一人の後に続々と他の生徒達も入ってくる。

私は、大翔と話していた事を気取られないように、再び先ほどのように窓の外を眺めるふりをした。

大翔も私がなぜ窓の外の方を慌てて見たのか分かったようで、机に伏せて寝たふりをしている。

教室でみんなの声が響き始めた。

新しいクラスメイトによろしくー!とか言う声。

中学校の時に友達だった子とまた同じクラスになった事を喜ぶ声。

だが、それは愛歌にとってどうでもいい事だった。

普通は新しいクラスになると友達できなかったらどうしようとか、

そういう事を心配するものだが、愛歌にとっては人との関わりなんて本当にどうでもいいのだ。

なぜなら彼女はいつも一人きりだったから。

長い間ずっと、友達なんていなくて、その間に友達がいる事の喜び、

友達と喧嘩することの

悲しみ。

苦しみ。

彼女はこれらすべての感情をわすれてしまったのだ。

それがとても悲しいこととも知らずに・・・。

「おらー、席につけー!」

しばらくすると、担任が教室に入ってきた。





< 9 / 15 >

この作品をシェア

pagetop