瑛先生とわたし
                           

瑛から 「話があるんだけど」 と呼び出されたのは 一樹が泊まりに行った

数日後

「何の話?」 って聞いても 会ったら話すからって ハッキリしない

牧村さんの店で待ち合わせをすることにして 子ども達はその日は両親に

預かってもらった


店に行くと菜々子も来ていた

これは何かあるなと思ったけれど 「”あら 菜々子も来てたの」 

なんてとぼけながら 口当たりのいいカクテルを注文してカウンターに座った

ほどなく瑛が現れて 3人並んで座って 互いの近況報告がすんでも 

まだ瑛は話を切り出さない

いい加減イラついた私は 話がないのなら帰るからって 席を立つふりをした



「ちょっと待ってよ 姉さんって どうしてそんなにせっかちなんだよ 

少しは場の雰囲気も考えろ」


「何が場の雰囲気よ 呼び出しておいて 何の話もないじゃないの 

私は忙しいんです」


「そんなんだから 義兄さんとケンカになるんじゃないか」


「ちょっとまって どうしてここであの人が出てくるの えっ? 

話って あの人のこと?」


「うん まぁね……」



呆れた……瑛を使って話し合いをもとうなんて やっぱり男って意気地がない

元の身内を味方にしようとする その態度が気に食わないのよ



「なら 話は聞かない もうすんだことだから」


「ちょっと待ちなさいよ ほんっと 昔っからアンタって人は

人の話を聞かないんだから 

華音 いまみたいな調子で洋輔さんとやりあったんでしょう」


「そうよ 話し合って 納得して別れたのに 今さらなによ」


「本当に話し合ったの? 姉さん 義兄さんの話を どこまで聞いた?」


「そんなのアンタには関係ないわ もう終わったことよ」


「義兄さんは まだ終わってないと思ってるみたいだよ」


「私は終わったの!」



私の剣幕におされたのか 瑛も菜々子も一瞬黙ってしまったが 

「華音 そんなに簡単なもんじゃないと思うのよ 

好きになって結婚したんじゃないの そうでしょう?」 

なんて 私に諭すように言い出した



「そうだけど あの時はそう思ったの 勢いだったから 

よくよく考えれば……」


「結婚しなかった? いい加減にしなさいよ 

どれだけ大騒ぎして結婚したか もう忘れたの?」



菜々子ったら 耳の痛いことを持ち出してくるわね

そうよ この人と結婚するんだと 交際三ヶ月で結婚宣言をして大騒ぎ

したんだから……




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