瑛先生とわたし


それまでも恋はいくつかした けれど そのどれも熟成しないまま

私って 相手に求めるものが多すぎるのか 思ったような反応がなければ 

すぐに熱が冷めてしまう

瑛なんて 高校の頃からGFを家に連れてきて 両親にもさっさと紹介して 

藍ちゃんと公認の仲だった

聞けば 彼女が中学生のときからの付き合いだっていうじゃない 

なんて生意気なの と思ったけれど 藍ちゃんに会ったら とっても素直で

いい子だった

「華音さんって呼んでもいいですか」 なんて聞くところも私は気に入ったわ


瑛たちが順調に交際を進めるなか 私は好きになった男性ができても 

気がつくとケンカばかり

最後は ”別れましょう” と私が言い出して長続きしない

そのうち瑛たちが結婚するって言い出して それは慌てたわよ

だって4歳も下の弟が先に結婚するなんて そんなの許せないでしょう

そのとき付き合ってた人と結婚を急いだの 

なんといっても彼の方が熱心に言い寄っていたし 私だって彼ならって思った 

彼といると やすらぐっていうのか 心から安心して過ごすことができた 

この人なら私を大事にしてくれるかもって その気になって 

なにより瑛より先に結婚したくて 

両親に挨拶に行ってもらったの


私の性格を熟知している菜々子は それは驚いてたわ

意外だったのが瑛の反応で 両親が 「交際期間が短すぎる 結婚は早い」 

と反対したのに

「姉さん いい人を選んだね 洋輔さん 僕は好きだな 

付き合った時間じゃないと思う 相性がいいんだよ」  

そう言って両親を説得してくれた

あの時は 瑛のお陰で結婚できたようなものかもね


でも 急ぎすぎた結婚は やっぱり無理があったみたい

生活って日常だもの 日々不満が募って この有様よ



「ねぇ なんで離婚しようと思ったの?」


「今さら聞かないでよ」


「今だから聞くのよ あのときの華音 何を言っても

聞く耳を持たなかったでしょう」


「性格の不一致よ 私のこと理解してくれない人だったの 

ねぇ 男ってどうして自分を正当化するの?」


「どういうことよ……」


「そりゃ あっちの方が仕事はハードだけど 私だって働いてるのよ 

家事だってほとんど私がこなしてた 

それなのに ありがとう の一言も言えないなんて 信じられる?」


「えっ? そんなことで義兄さんと別れたの」


「そんなことって 瑛 アンタねぇ」



瑛と菜々子は ふたりで顔を見合わせて 溜め息をついて 

それから批判的な顔を私に向けた



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