瑛先生とわたし


そんな騒ぎを起こしておきながら いまさらもとに戻すなんて私にはできないわ

うなだれながらつぶやいた私に 瑛が声をかけてきた



「何度でもやり直せるよ 生きてれば何度でもできるんだよ」



生きてればって その言葉 重いわね

弟に慰められ 親友に嫌味を言われ その日の私は いつもの威勢は影を潜め 

しょんぼりとひとり家にもどった



『華音 もう一度話し合おう 僕の話も聞いて欲しい 

できたら もう一度やり直したい』



別れた夫から電話があった

瑛君が背中を押してくれたって 苦笑いしたような洋輔さんの声に 

私は 『うん』 と言う事しかできなかった







「マーヤちゃん こんにちは 今日はアナタにプレゼントを持ってきたのよ」


”プレゼント? なぁに?”


「新しい首輪よ どうかしら」


”わぁ ステキ 気に入ったわ”


私は首の鈴を鳴らして喜びを伝えた


今日の華音さん なんだか華やかにみえる

何かいいことがあったのかしら

林さんと楽しそうにおしゃべりするのはいつものことだけど どこか違うのよね



「ふっ マーヤにプレゼントなんていって 照れくさいんだな 

義兄さんと上手くいってるのかな」


”上手くいってるって かのんさん リコンしてるんでしょう?”


「義兄さんが言ってたよ 素直に謝る姉さんが可愛く見えたって 

惚れ直したんだってさ」


”惚れ直したって? わぁ~ステキ”


「なぁ マーヤ 同じ人ともう一度恋ができるって いいことだと思わないか」



最後の言葉は とても嬉しそうに 小さな声で私の耳元で言ってくれた

もう一度恋をするの?

うん それって幸せなことだと思う

そうか だから輝いてるんだ

深澤さんも 菜々子先生も 華音さんも みんな同じ 恋してるのね 




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