瑛先生とわたし
10 花房家の猫 マーヤがみた人々
私が住んでいるのは 書道家 花房 瑛先生 のオウチ
先生のおじいさんが建てた家で 50年くらいたってるんだって
大きいけれど ちょっと古いかもって思ってたら 工務店のご主人三木さんが
「この家は大きな柱や張りがあるから 今どき貴重な家ですよ」 って
自分が建てた家みたいに自慢してた
その三木さんだけど このところ毎日ウチにやってくる
テラスにあるウッドデッキを作り直すんだって
トントン カンカン 材料を組み立てる音や 職人さんの声もするから
賑やかだけど やっぱり寂しいな
瑛先生 この頃 忙しそうで私と遊ぶ時間もないの
先生の家にはいろんな人が来るけど 一番多くやってくるのは龍之介さんだわ
先週の土曜日も高校の同級生を引き連れてきて 夜遅くまで飲んでたみたい
同窓会があったけど 瑛先生はお仕事で出席できなかったから
3次会をこの家でやったんだって
笑い声が夜中まで聞こえていて 近所迷惑よ! って思ったけど
次の日の朝の先生の顔 嬉しそうだったなぁ
「同級生っていいもんですね」 って林さんに話してた
ふぅーん そうなんだ
私にはわからないけど 先生が楽しくできたのならいいか
先生が家にいるときは 講座のお正月用の書のお手本を書いたり
この前は 頼まれて引き受けた すごく大きな字を書いてわ
立派な木の板に写されて どこかの学校の玄関に飾られるんだって
それから 龍之介さんからの仕事もあるって言ってたわね
テレビのドラマの題字を 先生が書くんだって
題字って何? よくわからないけれど 林さんが
「まぁ テレビに先生の書かれた字とお名前がでるんですね すごいわ」
って興奮してたから きっとすごいことなんだと思う
お昼過ぎに やっと終わったよ……って先生が大きな伸びをしたから
わーい 遊んで遊んで ってそばにいったら
「ごめん マーヤ 来週から大学だ 準備をしなきゃいけないんだ
夜になったら遊んでやるからね」 って言うの
抱っこしてくれたけど すぐにおろされちゃった
うーん つまんないの