瑛先生とわたし


外は雪なんだって、寒いと思ったわ。

先生のベッドにぴょんと飛び乗ったら、お布団がふわふわと暖かくて気持ちよ

かった。

寝る前には本を読むことが多いのに、今夜はそうじゃないみたい。



「マーヤ、渉が……あははっ」


”渉がどうしたの?”



思い出し笑い?

先生ったら笑ってるけど、半分困った顔をしてるわ。



「反抗期だな、ついにきたか」


”なにそれ、いいこと?”


「僕にかまうな、迷惑だと言わんばかりだったな」


”瑛先生が言ってること、わたしには全然わかんない。

わかるように教えて!”


「渉が瑠璃さんに会って話をしていたと菜々子さんから聞いていたが、

あいつ、何を思ったのか、急に突っ張って……

ふふっ、僕のせいにするなってか……まだまだ子どもなのに、

生意気なんだよ」


”そうそう、渉はナマイキよ。まだ子どもだし”


「けどなぁ、わかるんだよ。

あれくらいの歳の子は、自分はもう子どもじゃない、

親の干渉は受けない、何でもわかってると思い込んでいる。

親や大人の言葉が癇に障って、イライラして、なにかに感情をぶつけたくて、

素直じゃなくて。

でも、親はそんな自分を理解してくれると思ってる」


”えーっ、そんなの勝手だわ”


「反抗期の子は、みんな身勝手だ。

これからますます抵抗してくるんだろうな。ふっ、楽しみだ」


”楽しみなの? 先生、へんなの”


「僕は僕で、父さんは父さんか……そうだな……」


”とうさんって誰のこと?”



わたしが首を振って鈴を鳴らすと、先生がお膝に抱っこしてくれた。

それから、サイドボードの上の藍さんの写真をじっと見ていた。

先生と藍さん、どんなお話をしてるのかな。

聞いてみたいけど、眠くなっちゃった。

わたしはそのまま先生のお膝で目を閉じた。

おやすみなさい……



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