死にたがりの魔法使いくんと死神ちゃん Ⅱ
Ⅰ.夢と死神ちゃん
「…死神か」
色をなくした世界で、何か建物だったものの残骸に凭れ、虚ろな目をした人物が『私』に声をかける。
『私』は私であって、私ではない。何が言いたいかというと、これは夢。夢の中の私。
でも、『今の私』ではないことは確か。
「そうよ」
夢の中の私がそう応えると、目の前の人物は途端に目に光を宿し言った、「俺を殺してくれ」と。
なんだかその言葉に夢の中だというのに、アイツが思い浮かんでしまった。
そんな思考とは別に私は淡々と話を続けていた。
「あなたの寿命はまだきてないから、無理ね。それに死神を殺し屋か何かと間違えないでくれる?」
「………」
再びその人の瞳から光が失せる。その表情からは絶望、虚無感といった負の感情が読み取れる。周りのこの景色といい、目の前のこの人以外に生の存在が感じとれないこの世界は一体何なのだろう。
知っているはずなはのに、私は知らなかった。
周りのことに気をとられていた私は、いつの間にか会話が終わっていたことに気付かなかった。
気付いた時には、虚ろな目をしていた人物がこちらに向かって、「約束したからな…」と言って目を閉じてしまった。
…………………さん
………リアさん!
「ユリアさん!!」
ハッと目が覚める。いつもの自分の部屋の天井が目に入ってくる。と同時に私の寝ているベッド脇にアイツがいるのも視界の隅に入った。
「………魔法使い?」
「いいえ、エリストです」
何故かむすっとした顔で訂正される。
「んもー!魔法使いではなく、名前で呼んで下さいとあれだけ言ったじゃないですか!」
「えーと…そうだったわね」
寝起きのせいか、あまり頭が働かず彼の言葉に反論せず、そもそも私の部屋に彼がいることすら突っ込むことを忘れていた。
何か夢を見ていた気がするのだけど、どんな夢だったのか、まったく覚えていなかった。
きっとコイツに起こされたせいだ、と決め付ける。
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