死にたがりの魔法使いくんと死神ちゃん Ⅱ
「彼ならここに来たけど、すぐに帰ってしまったよ」
どうやら、ホウキで飛んで行ってしまったらしい。
「そうでしたか」
なんだ、せっかく追いかけてきたのにな…。
ん?なんだがこれじゃ、私が魔法使いに会いたかったみたいじゃないか。
いつもだったら、嫌でも魔法使いが私を追いかけてくるのに。
…………。
やめよ、やめよ。
アイツに会ったって、殺してくれー!って面倒なだけだわ。
「なんだいあんた、あの坊やを追いかけて来たのかい?」
「え!?あ、いやえっと…」
なんと言ったらよいか、歯切れが悪くなってしまう。
素直にアイツを追いかけて来たと言うのがなんだか、癪だった。
「あの坊やのこと、あんた知ってたんだねぇ」
「えっと、まぁ…アイツが一方的に私を追いかけ回してたもので」
「坊やがだいぶ柔らかくなったと思ったら、そういうことかい」
なんだかおばあさんの口ぶりだと、昔から魔法使いのことを知っているようだ。
心なしかベールの向こう側で嬉しそうな顔をした気がする。
そもそも柔らかくなったってなんだろうか。
昔はツンケンしてたとか?あのぼやんとしたアイツが?
「おばあさんと魔法使いって、昔からの知り合いなんですか?」
思いきって質問をしてみる。
「……そうだねぇ。随分と長い付き合いになるかもしれないねぇ」
心の底から昔を懐かしむような言い方だった。
「坊やはね、氷のような子だったんだよ」
氷……。
確か、魔法使いは氷の魔法を使っていたことを思い出す。
「でも、最近の魔力の波動の影響で坊やが少しずつ昔の坊やに戻りかけている。あんたが、あの子を支えてあげなさい」
そう言い残して、おばあさんは黒い霧となってその場からいなくなってしまった。
あとに残されたのは、机と水晶玉だけだった。