死にたがりの魔法使いくんと死神ちゃん Ⅱ
「あーもー!本当にどうなっちゃってるのよ!」
数々の攻撃を避けながら、走り回るがどこにも魔法使いとキングの姿はない。
もう城の中には、いないのかしら。
もう城から出ようと、そう思った時。
どこからともなく、冷気が漂ってきた。
冷たい空気が辺りを覆い尽くしていく。
ぶるっと身震いをする。まるで冷凍庫に入っている気分。
出所はどこだろうと、冷気が漂ってくる方に歩いて行く。
すると城の正面の大階段の方から冷気が漂っていることがわかった。
急いで階下へと降りる。
降りた先には、城の正面玄関である大扉があるのだが、固く閉ざされた扉が見事に氷で覆われていた。窓からの光を受け、キラキラと光っている。
「これは……」
きっと、魔法使いだ。
何故か確信があった。
そらなら、アイツが近くにいるかもしれないと、辺りを見回す。
そんな時、左手の奥からドサッと何かが倒れる音がした。
漂う冷気のせいで、景色が濁って見える。故に近くまで行かないと何があるのかわからなかった。
ゆっくりと近付いて行く。
ぼやーと人影が現れた。
「そこにいるのは誰?…エリストなの?」
人影がピクッと反応したのがわかった。
私は走ってその人影の所まで行く。
するとそこには、やはり魔法使いがいた。
「良かった!見付けた………わ」
魔法使いの足元には、何体ものドワーフやエルフが氷付けのまま床に転がっていた。
よく見渡してみると、そこら中に氷の塊が見える。
これ、全部………。
何故だか背筋がゾクッとなる。
「エ、エリスト…これ全部、アナタが…?」
「……」
私の呼び掛けに答えず、その場で微動だにしない魔法使い。
「ちょっと、聞こえてる?」
思わず魔法使いの肩を掴む。
「っ!!」
掴んだ瞬間、今まで見たことのない冷たい視線を投げ掛けられた。
肩に置いた手を素早くどかす。ほとんど反射的にだった。
「…エリ、スト………?」
本能的な恐怖で声が震えた。
なんて眼(め)をしてるの…。これが、『あの魔法使い』?