死にたがりの魔法使いくんと死神ちゃん Ⅱ
「ちょちょちょちょ…っ!ユリアさん!!さすがの僕でもホウキなしで空に放り出されたら、地面まで真逆さまですよ!」
魔法使いの体を玄関の方までグイグイと押していく。
「あら、丁度いいじゃない!お望み通り死ねるかもしれないわよ?」
「ぼ、僕は貴女に殺してもらいたいんです…っ!」
「なんなのよ、それっ!」
2人で押しつ押されつの戦いを繰り広げながら押し問答を繰り広げる。
「それは!……――です、から…」
「え?なに?」
魔法使いを押すことに集中しすぎていた私は、語尾が小さくなってしまった魔法使いの言葉が聞き取れなかった。
それにしてもコイツ、意外と強い!男と女なので力の差があるのは当たり前かもしれないけど、ある程度玄関に近付いてきた後から、一歩も動かせていない。
グググ…と足に力を込める。
くっ、動かない。
私が必死になっているその時、頭上から私の名前を呼ぶ声が聞こえてくる。
「ユリアさん…」
急に魔法使いが抵抗を止めたものだから、こちらも動きを止める。
「なによ」
「最近、何か身の回りでおかしなこと…いえ、何か変わったことは起きていませんか?」
「?」
魔法使いの言いたいことがさっぱりわからなかったけど、あまりにも真剣な顔をしていたものだから、暫く考える。
「別に、特に思い付かないけど…。どうしたの?」
「いえ、なんでもないです」
いつも通りのニコッとした顔に戻ってしまい、先程の真剣な雰囲気はどこかへ行ってしまった。
「それにしても、来て良かったです!ずっとまともな食事を摂れてなかったので、助かりました~!」
「はっ!?」
「お腹が空きすぎてフラフラと飛んでいたら、ユリアさんのお家が丁度あったものですから」
それって、ただご飯を食べに来ただけってこと!?
「ちょっと!それって!!!」
いつの日かのデジャヴを感じ、そんな私が何か言う前に、魔法使いは出現させたホウキに乗って、ご馳走さまでしたー!と逃げるように去って行った。