死にたがりの魔法使いくんと死神ちゃん Ⅱ
Ⅱ.異変と死神ちゃん
「……また、夢?」
目が覚めるとそこは、いつも通りの自分の部屋だった。
あの氷に覆われた白い棺や、意味不明な文字や紋様はどこにもなかった。
起き上がろうとした時、何か重たいものが体の上に乗っていることに気が付いた。
なんだろう?と上半身を起こしてみると、
「オルカ…??」
私の相棒でもある大鎌が布団の上にがっつりと乗っかっていた。
呼び出した記憶はないけど、寝ぼけてる間にオルカを呼んでしまっていたのだろうか。
不思議に思いながらも、オルカをしまう。
夢で同じような大鎌を見てしまった影響かしら。なんて軽く思いながら、少し活動した後にはすっかりオルカのことも夢の内容も忘れてしまっていた。
今日もリーダとリタさんの所へと来ていた。
数日前と変わらず、リタさんの体は小さいままだ。
いつものテーブル席に座りながら、お店の中で小さいながらパタパタと働くリタさんを眺めていた。
そんな傍らで、レジの所でボーっと突っ立ってるリーダが目に入った。
何をするでもなく、ただ一点を見つめて微動だにしないリーダ。
いつもだったら、私が入店してきた瞬間に絡んでくるのに…。
「リーダ」
呼び掛けてみるが、反応なし。
あまりにも無反応なので、立ち上がってリーダの所まで向かう。
「ちょっと、リーダ?聞こえてる?」
呼び掛けながら、肩を揺すってみる。
すると、ビクッと体が反応しリーダの視線がやっと私の方に向いた。
「あれ?死神ちゃん、来てたんだ」
「ずっといたわよ」
え、ほんとに?なんて素っ頓狂な声をあげるリーダ。
本当に私がいたことに気付いていなかったらしい。
そんな時、奥の工房でリタさんの悲鳴と何かがカランカランと次々に落ちていく音が聞こえ、慌てて二人で向かえば、床に散乱した道具類やボウル、そして粉まみれの小さなリタさんがそこにいた。
床に散乱した物の片付けや、リタさんを救出したりなんだりとやっているうちに、リーダもいつも通りに戻っていた。
だから私もさっきは疲れていただけなのかもしれない。そう思い、先程のことはあまり気にしなかった。