やさぐれ女の純情


幸せそうな笑顔の女の子とすれ違うたびに、


そう心で毒づく。


もう、何年こんな冬の夜を繰り返してきたのだろう。


今年、初めてイルミネーションが点灯された昨日も、そうだった。


腕にしがみついて歩く奴ら一人残らず、毒を吐いてやった。


きっと明日は、いつもより荒みきった毒を呟くことになるだろう。


もしかすると、軽く舌打ちくらいはするかもしれない。


……気付かれないようにだけど。



でも、今夜は違う。


今夜の咲樹は、あれこれケチをつけながらも、


本当は一番好きなこの季節の訪れを感じる余裕などない。


微塵もないのだ。


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