恋……シヨ?‐武藤 雅晴編‐
Chapter9‐君が好き‐
あてもなく走った私は、大盛り上がりの中庭を抜けて人が全くいない場所までやってきた。
「もういっか……」
「どこまで走るのかと思いましたよ」
肩で息をする私とは違って、武藤くんは涼しげな顔で笑う。
「だって…先生にあんなとこ見付かったら、武藤くんまで悪者になっちゃいそうな気がして…」
「もしあの二人がデタラメなこと言ったら同じじゃないですか。余計事態がややこしくなる」
「あ……」
そう言われて初めて気付いた。
確かにそうだよね…、逃げたらそれこそ疑われるのに。
自分がしたことが間違ってたとわかって急激に不安になる。
「ごめん、どうしよう…!今頃あの人達が変なこと言ってたら…」
「大丈夫ですよ」
動揺する私を落ち着かせるように、武藤くんが優しく微笑む。