雪幻の墓標

「エフィ……」

 リヴェズの顔を見るなり彼女の顔に不安が見て取れた。
 おそらく、良い知らせを持ってきた顔ではないと気づかれたのだろう。

「ごめんね、エフィ。
 おうちには……村には連れていけない」

 エフィの長い髪を手で梳きながら言葉を紡ぐ。

「みんな、病気が広がるのが怖かったんだろうね。
 村があった場所は全部焼き払われて、今も入れないんだって。

 その代わり……」

 エフィの顔が事態を受け止めて暗くなるのが嫌で、とっておきを出す。

「その代わり、そこでもっといいものを拾ってきたから。
 だから機嫌直して?」

 エフィから視線を外し、大きな声で入ってくれとドアに向かって言う。

 ややあって、顔を出したのは――

 見たところ二十歳前後の黒髪の三枚目の男だった。

「おにい……ちゃん……」

 幻でも見ているようにエフィは呟き、近寄ってきた「お兄ちゃん」の顔に戸惑いながら触れ、

「お兄ちゃんなの……?」

 相対する「兄」も、感慨深げにエフィを抱き締め、
「生きてた……生きてたんだな……」
 ぬくもりを逃さぬよう、そう繰り返した。


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