雪幻の墓標

 暗い道をウォルトとリヴェズは並んで歩いていた。
 本当はエフィもウォルトを送っていきたいと言ったのだが、ウォルトが男同士で話すことがあると断ったのだ。

「……なあ、あんた、なんで4年半前と外見が変わってねぇんだ?」
 ぽつりと問う。
 会った瞬間から思っていたことだ。

「……僕は人間じゃないんだよ」
 同じくぽつりと返すリヴェズ。
「騒ぎになるからあまり人に言わないでね」

 人間じゃない……?

 あまりの発言に呆気にとられ、意味が理解できない。

「言っただろ? 僕はお嫁さんをもらえる立場じゃないって」

 ああ、そんなことを言っていた気がする。
 確かあれは、リヴェズが村にやって来てエフィの容体を見た時だ。


『お嬢さんの病気は治療をきちんとすれば治ります。知り合いの治療院を紹介しますから入院させてください』
『しかし、そんなお金は……』
 怯むエフィの父親に、リヴェズは悲しそうな目で眠っているエフィを見て、

『来年の誕生日も迎えられるか分かりません』

 エフィの両親は言葉を失った。一緒にいたウォルトもだ。

『じゃあ、こうしましょう。
 僕が治療費を出します。代わりにお嬢さんが18歳になったらお嫁に下さい。

 僕、お嫁さんをもらえない事情があるんです』


 結局治療費は最初はリヴェズが立て替え、少しずつ両親が返していくということで決着したのだが。

「ところで君、エフィと血が繋がってないんだってね」
 人間じゃないという言葉にどう反応していいか迷っているうちにそんな言葉をかけられた。

「ああ。俺、近所の幼馴染だったんだよ。でも両親が死んじまって、仲よくしてくれてたおじさんとおばさんが引き取ってくれたんだ」

「うん。エフィがそう言ってた」

 と、ウォルトが立ち止まる。
「ここだよ。ここに住み込んでんだ」

 言うと、ドアを開けて低姿勢に戻りましたと言う。

「大工をしてるのかな?」
「ああ。俺馬鹿だから身体動かすしか能がねぇし。
 でも設計とか色々習ってるぜ。

 ……ところで……」

 ウォルトは言い出しにくそうに、
「エフィがつけてるあのペンダント、何とかならないのか?」

 リヴェズは微妙な顔をした。
「何を贈ろうとしても、あれがあるから要らないって言うんだよ」

 懐から何かを出す。
 暗くてよく見えないが、ネックレスのようだ。

 それをまた懐に仕舞い、
「ところで、棟梁さんに会える?」

 何気ない調子で言うリヴェズに疑問を持たず、ウォルトは棟梁が起きているか確認した。

「ちょっと話させてもらえないかな? 2人だけで」


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