雪幻の墓標


「あー! 寒かったー!!」
「リヴェ様の力で楽に雪山を超えようとしたりなさるからですわ」

 暖炉の入った部屋で暖かさを噛みしめるウォルトに女性が言う。

「改めまして、わたくしはノイトラ。
 さきほどご紹介がございました通り、リヴェ様の娘ですわ」

 3人を捕まえた時と同じ、季節感のない黒いドレス姿である。リヴェズと同じ質の髪が短く切り揃えられており、リヴェズより眼光は鋭い。

 居るだけで威圧感を放っているような女性だ。

 何故か――リヴェズは無言のままである。

 ノイトラは3人を順に見渡して、エフィに目をとめた。
「……ほう?」
 
 ノイトラの声にリヴェズが震撼する。
 このノイトラ、他人の思考を読めるのである。

「面白いことを考えていらっしゃいますわね、小娘。
 さあ、そのまま口に出してごらんなさい」

 ――駄目だ! 言うな! エフィ!
 そう叫びたかったが、ノイトラに封じられ声も出ない。

 やがて――
「あの……ノイトラさん……」
 おずおずとエフィが口を開く。

「ノイで結構ですわ」
「えっと……じゃあ、ノイさん……」

 エフィは恥ずかしそうに身じろぎしながら、
「その服……下着じゃ……?」

 ウォルトがフォローに入ったが、エフィはノイトラに引きずられて館の奥へ消えてしまった。


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