雪幻の墓標

 優しい香りがする。
 どこまでも深く、安寧を思わせる香り。

 すぐに、彼の匂いだと気づいて目を開けると、予想通り目の前に座っていた。

「気分はどう? エフィ」

「……リヴェズ……」

 エフィが何かを言い出す前にリヴェズは大きな花束を押し付ける。
「?」

「良かったね。退院の許可が出たよ」
「……え……?」

 目を瞬かせるエフィにリヴェズは優しく微笑むと、
「あとは近くの先生に引き継ぎをしておくから、時々診てもらえば大丈夫だよ」
 枕元に置いてあったイヤリングを手に取り、彼女の手に握らせる。

「着替えて。少し散歩しよう」


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