雪幻の墓標
市場を歩いていると、見知った顔がこちらに気づいて手を振ってきた。
「やあ。見かけないと思ったら非番かい?」
「はい!」
治療院の看護師だった。
いつも白衣姿しか見ていないのでエフィが気づくのは一瞬遅れた。
暫く談笑した後、
「あの……前から聞きたかったんですけど……リヴェズさん、どこの香水使ってるんですか?
どこにも同じ香りのがなくて……」
恥ずかしそうにそう聞き出す看護師にリヴェズは悪戯っぽく笑った。
看護師になって1年半ほどだと言うし、そういう年頃なのだ。
28歳と所謂「お兄さん」で顔立ちも整い所作の良いリヴェズに憧れたとしても不思議ではない。
「残念だけど、これは特注品でね。
それにこれは君には似合わないと思うよ」
「そうですか……」
残念そうにする看護師の肩に手を置き、
「大丈夫。君に似合うのを探しておくよ。
……で、デートはいつ?」
リヴェズの言葉の前半に嬉しそうな表情を見せた直後、後半に顔色を変え、
「だ……そ、そんな……!
い、……いや、そうじゃなくて!」
片手に置いていた手を両手に増やし、
「どんな場所で会ったか考えるんだね」
耳元でぼそっと言う。
言われて、看護師は初めて気づいた。
ここは女性もののアクセサリーや雑貨が並ぶ店が多い。
「ちょうどいい。エフィもいるし、君の彼女さんへのプレゼント選びも手伝ってあげるよ」
「…………
……はい……」
顔を真っ赤にしつつ、看護師は観念した。
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