雪幻の墓標
「……!?」
今日リヴェズが部屋を訪ねてくるなりエフィは息をのんだ。
いつもは派手目の服装が多い彼が、黒一色に身を包んでいる。
そこから「喪」を連想するなというほうが無理だろう。
「……エフィ」
そっと目線を合わせて座り、
「落ち着いて聞いて」
エフィのほうはというと既に混乱を始めていた。
そこへ――
「君の故郷が壊滅した」
無情な事実が降ってきた。
エフィは暫し呆然とする。
――やっぱり事態に追いつけないか……。
リヴェズは昨日やってきた役人から聞いた話を伝わりやすいように言って聞かせた。
エフィの故郷の村で謎の伝染病が流行り、村中に蔓延し、国は被害を広めないために村を封鎖してしまったのだという。
「もう誰もあの村に入れないし出てこられな……」
「治せないの……?」
ようやく絞り出したようなエフィの声は、一筋の光にすがろうとしていた。
「リヴェズは……治せないの……?」
「僕が万能ならこんな治療院に入れなくても君をあっさり治してる。
無理だ……」
ようやく事態が理解できたのか、エフィが泣き始める。
リヴェズはそんなエフィを黙って見ていたが、やがて手を握り、
「ねえ、エフィ。……僕が居る」
できるだけ優しい声音で言う。
「僕が君を守ってあげる。立派に育てて、最後まで面倒を見るよ」
そう言うと、覆いかぶさるように抱き締め、唇を重ねた。
「愛しているよ、エフィ……」
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