甘苦プリンセス【完結】
鳥が鳴く。
私達の真上にある
桜の木が風に揺れ、音を奏でている。
しかし今
私達には、寂しい空気が流れていた。
悪いコト…
聞いちゃったかな…
「俺のお袋、昔ガンで死んでさ…」
『…うん』
「ガンが分かって、それからお袋は余命二ヶ月って宣告されたんだ……」
『二ヶ月…』
キス野郎の顔を見た。
その横顔は、さっき見たあの悲しげな表情と同じだった…
やっばり、見間違えじゃなかったんだ……
「お袋が死ぬまで、誰からも、ガンのことも二ヶ月しか持たない余命も、俺に教えてくれなかった…
だから親父から、このことを聞いた時、すげぇ後悔した……
なんで俺、あの二ヶ月をいつもみたいに、ただ平凡に暮らしてたんだろ…って
お袋に何もしてやれなくて……」
キス野郎は、ギュッと唇を噛み締めた。
目には涙を浮かべている…
「だから、俺入学式に参加したくなかった……自分の子供を、温かい目で見てる親達が羨ましくて……もう16才なのに、親の愛が欲しいなんて、俺変だよな…」