お腹が空いたらお家に帰る
香苗は口の中のおかずをお茶で流し込むと、光也をジロリと睨んだ。
「みっくんつめたーい!はい、おかわり」
差し出された茶碗を当然のごとく受け取りながら光也は言った。
「冷たいはひどいですよ、いったい誰がこの料理を作ったと思ってるんですか」
香苗に返す茶碗に山盛りになっているご飯を炊いたのはもちろん光也である。
というか、テーブルに並んでいるものすべてが光也の手料理である。
「ごめーん」
全く反省する様子のない香苗に思わず光也の口から愚痴がこぼれる。
「まったく。夕方のセールに間に合ったからいいものの、もっと早く連絡下さいよ」
食事を作りに来てほしいときは、前日までに連絡するというルールはもはや完全に無視されている。
少ない時でも週2日。多い時は毎日。
光也の料理が食卓に並ぶ。
「って、聞いてます?」
「え?」
「だから、早く連絡して下さいって話ですよ」
「ああ、連絡ね。気を付ける」
……気を付けた試しはないけれども。
恋が突然訪れるように、空腹もまた突然訪れるものなのだ。