お腹が空いたらお家に帰る


その様子に香苗は思わず苦笑した。


そう歳は離れていないのに、香苗は他人の恋愛ごとに対するここまでの積極性は持ち合わせていないからだ。


「私の話より、藍ちゃんの話が聞きたいな!ほら、あの合コンの人はどうしたの?」


香苗が藍と呼んだ後輩はお茶を飲み干すと、勢いよくコップをテーブルに置いた。


「そんなのとっくの昔に終わりました!」


察するに相当微妙な結末になったようだ。


藍は語気荒く香苗に迫った。


「だから、今日は香苗先輩の話が聞きたいんです!」


失恋の痛手のせいか、今日の藍は虫の居所が悪いようだ。


これ以上、機嫌を損ねては大変だ。


……さて、どうしたものか。


香苗はずずずっと味噌汁を啜り、おもむろに口を開いた。


「……彼氏はいるよ、うん」


彼氏という響きがやけに生々しくて気恥ずかしい。


「やっぱりいるんですか!?」


「どんな人ですか!?」


急に降って湧いた、香苗の浮いた話にみんな我先にと飛びついていく。


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