BRACK☆JACK~序章~
「エイジは?」
「あいつなら、かろうじて息があるヤツ捕まえて尋問中だ 」
「…これ、私を狙っている連中の仕業だった…」
心なしか俯いて、ユイは言った。
レンは微かに、眉をしかめる。
「お願い。何も聞かずに、あと2日一緒にいてくれる? 迷惑は…かけるかもしれないけど…」
「何言ってんだ」
レンは、ぽんとユイの頭に手を置いた。
「気にすんな。お前がいたいだけ、俺たちと一緒にいればいい」
そう言って、レンはアパートから出てくるエイジのほうに視線を移す。
「どうだった?」
「…だァめだ。ありゃあ何も喋らねェな。ま、俺がボスな ら、すぐに口を割るような部下は必要ねェけどな」
エイジは言いながら、タバコに火をつけた。
「ごめんエイジ、あれは…」
「話はあと。とにかく今は、ここを離れたほうがいい。できるだけ遠くに…そうだな、国外って手もある」
そう言うエイジに、ユイは首を横に振った。
「…ダメ。私、この街からは離れられないのよ…」
エイジはちらりとユイの方を見て、すぐに笑顔を作る。
「了解、お姫様。じゃ、いったん街のどこかに身を潜めるとしますか」
本当に、この二人は。
ユイは思う。
こんな目に遭っておきながら、こうやって何もなかったかのように笑ってくれる。
理由も聞かずに、まだ、一緒にいていいと言ってくれる 。
――…本当に。
やっぱり、この二人の元に来て、良かった。
自分の身の安全だけではなく、この二人に出会えて本当に良かったと、ユイは思う。
「何してんだ、行くぞ」
レンはもう、歩き出している。
エイジはユイを促すと、その後を歩き始めた。