BRACK☆JACK~序章~
「あァ…そういうことか。どうりで俺と同じ匂いがするワケだぜ」
納得したように男はそう言うと立ち上がり、煙草を取り出して、こっちを真っ直ぐに見つめて。
「昼間の狙撃手、あんただな?」
つい、うっかり口走ってしまったこととはいえ。
すぐにここまで理解してしまうあたりやっぱり、只者じゃないとミサトは思う。
同時にいつでも仕掛けられるように神経を研ぎ澄ます。
頭の中で、周りの状態、そしてこれからこの男がどんな行動に出るのか、あらゆる状況を想定する。
――…だが。
「俺はエイジ、よろしく」
男はそう言って、右手をこっちに差し出した。
「…へっ?」
そういう状況は、これっぽっちも想定していなかった。
かなり真の抜けた顔で、ミサトはエイジとその差し出された右手とを、交互に見つめる。
「言っとくけどよ、俺はもうロンのガードじゃねェ。たったさっき、一仕事終えたばかりだしよ」
「ロンのガードじゃないの?」
ミサトの質問に、エイジは笑って答えた。
「俺達は“情報屋”さ」
そう言って、エイジはいきなりミサトの肩に手を回す。
「ちょ…何すんのよ」
「しっ…そのまま歩け」
エイジはちらりと後ろに目をやる。
さっきから気付いてはいたが、ミサトは周囲から感じる殺気を見逃してはいなかった。
まぁ、この状況を総合的に考えると。
「あんた、何かヘマやらかしたのね?」
昼間は確かに、ガードとしての能力はピカイチだと思ったのだが。
見込み違いか。