BRACK☆JACK~序章~
 だが、この傷でこの人数相手に逃げ切れるかどうかは、正直疑問だったが。



「…ふぅ…」



 煙を一息吐き出して、エイジは立ち止まった。

 怪しげな男達は、じりじりとこっちに近づいてくる。



「さぁて」



 それを一睨みして、エイジはいつでも逃げられるように、体勢を低くした。



「いっちょ、いきますか」



 呟いて走り出そうてした、まさにその時。



「ハァイ!! マイダーリン、さっきはゴメンねェ~!!」

「…いっ…!?」



 いきなり、後ろから抱きつかれた。

 同時に左肩に激痛が走り、エイジは思わず顔をしかめる 。



「あ、ごめん、痛かった?」



 抱きつきながら、エイジの耳元でミサトは言った。



「きっ…君ならどんな痛みにも耐えて見せるさ…会いたかったぜ、ハニー」

「恋人ごっこの続きよ、ダーリン」



 そう言って、ミサトはエイジに向かってウインクする。


「でも、どうして戻ってきたんだ?」

「あたしにまで追っ手がついたのよ。もう顔は知れたってことだから、どうせなら思いっきり巻き込まれてあげようと思って」

「ホントは俺に、もう一度会いたかったとか?」

「…ばっ、バカなこと言ってないで、歩いてよ」



 ミサトはエイジの腕に自分の腕を絡ませる。

 そして、半ばエイジを支えるようにして歩き出した。

 だがしばらく歩くと追っ手の気配はだんだん消えて行き、やがて完全になくなっていった。



「…どんな魔法使ったんだ?」



 さすがのエイジにも、そのカラクリは理解出来ないようだった。

 そんなエイジに、ミサトは特上の笑みを浮かべる。
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