BRACK☆JACK~序章~
☆ ☆ ☆
「――…で?」
傷ついたジャガイモと、何故かリビングのソファに座っている美人を交互に見つめ、エイジはその話の先をレンに促した。
「何がだよ?」
キッチンの壁に寄りかかりながら、レンは言う。
「このヒビ割れたジャガイモの代償が、そこの美人なお姉さまなのかって聞いてんだよ」
「それって、嬉しいってこと? ムカツクってこと?」
小声で話す二人に、女はリビングから声をかける。
所詮、狭いオンボロアパート、どこにいても会話は筒抜けらしい。
「そりゃもちろん、喜んでるんですよ。…えぇと」
「ユイ、よ」
「ユイさん」
くすっと笑ってタバコを取り出すユイに、エイジはライターの火をすっと差し出して。
「だけどどうして、俺たちのことを?」
「…噂に聞いたのよ」
ユイはエイジを見つめる。
どんな噂だよ、と、キッチンの壁にもたれかかりながらレンは聞き返す。
「本当は死んでしまっていてもおかしくない二人が、未だに生きてるって噂」
ユイの言葉を聞いた途端、エイジとレンの目付きが、心持ち険しくなる。
ユイは苦笑して。
「もう、そんなに怖い顔しなくていいってば。死神も味方するようなあなた達なら、私も一緒にいられるんじゃないかって…そう思っただけよ」
まだ半分残っているタバコを灰皿に押し付けて、ユイはソファに深く沈みこんだ。
膝の上に組んだ両手は、微かに震えている。
「…さっき、なんで襲われてたんだ?」
レンが聞いた。
「ただ単にナンパされてただけ。あんまりしつこいからつい、応戦しちゃっただけ」
「銃で狙ってた男は?」
「……さァ、ね」
真っ直ぐに突き刺さるレンの視線から逃れるように、ユイは目をそらした。