BRACK☆JACK~序章~
 しかし、さっきからミサトの中で、それだけでは説明のできない感情が芽生えていた。

 本当に偶然だけなら、わざわざエイジを追いかけていかなくても良かった。

 偶然だけなら、わざわざ助けたりしなくて良かったはずだ。

 ――でも。

 何故か追いかけずにはいられなかった。

 自分の中で、何だかんだ理由をつけて今日の一連の行動を正当化しようとしてはみるものの。

 現に今、こうやってエイジと一緒にいるということは。



『君って…同じ香りがするね』



 それは、昼間、狙撃のテストをしていた時から、ミサトも漠然と感じていた。

 エイジもきっと。

 ウイスキーを飲み、ゆったりと天井に向かって煙を吐くエイジを見つめて、ミサトは小さくため息をついた。



「どうかしたか?」

「…ううん、何も」



 問いかけにミサトは笑って答える。



「でもよ」



 エイジは天井を見つめながら話し出した。



「人と人との関係なんて、みんな偶然でできてるって思わねェか? 偶然出会ってそれからのことは、自分達が決める」

「そうね…だから、あたしはエイジを追いかけた」

「偶然で終わらせたくなかった?」



 エイジの言葉に普通に頷こうとして、ミサトは慌ててウイスキーを飲んだ。



「だァから、あたしに関わると…」

「ウー・イーシー」

「……!?」



 その名を聞いて、ミサトはピクリと肩を震わせた。

 そして、ゆっくりとエイジのほうに視線を向ける。
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